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最近の障害年金に関する情報を掲示いたします
厚生労働省は、平成28年9月から障害年金について、精神の障害に関するガイドラインを作成・運用することになりました。
ここで注目されるのが、診断書裏面記載の障害による日常生活能力の判定(7項目)と日常生活能力の程度の2つの指標を用いたテーブル表が作成されたことです。(図表参照)
ただし、このテーブル表だけが独り歩きしないか危惧する面もあります。あくまで目安にすぎません。
最終的には、診断書の各記載事項を参考にして認定医が総合判断することになります。
いわゆる総合評価ー総合的な判断によりますので、短絡的にテーブル表に該当したから障害年金が必ずもらえるものだと勘違いしないことです。
診断書を入手されたとき、記載事項すべての項目を確認する必要があります。(中には病院の封筒に封をされたままの状態で、診断書を年金機構に提出する方もおられます)
診断書の内容が、実際の障害状態(患者さんの正確な障害状況)を反映しているか、又それぞれの記載内容が整合性があるか、さらには病歴・就労状況等申立書の記載と合っているか等チェックする必要があります。万一診断書の記載が事実と異なる場合は、それなりの対応をとる必要に迫られます。
精神の診断書を見ただけでプロの社会保険労務士(障害年金専門の方)なら、どの等級に落ち着きそうかはわかります。(もちろんボーダーライン上も多数ありますが)
上記の対応は平成28年9月からの対応です。大阪・堺障害年金相談室 上島社会保険労務士事務所までお問合せ下さい。無料相談実施中です。
平成28年9月、大阪市内の障害年金勉強会に参加しましたので、その時の様子と感想を述べさせていただきます。今回の特徴は、主催者側から精神障害のガイドラインの説明とともに、障害基礎年金の認定医の先生が出席され講演頂いたことにあります。
1.まず、主催者側からは以下のコメントがありました。(要旨と感想)
今回の精神障害に関するガイドラインについては、認定の基準となる項目を具体的に上げている。実施要綱の内容となっています。
そもそも、昔は国民年金の障害年金と厚生年金の障害厚生年金は別制度でしたが、昭和61年の基礎年金創設により合体し、少なくとも2級以上の認定基準は同じ認定基準となっています。
同じ2級でも障害基礎年金と障害厚生年金は同じ認定基準のもとに審査側は判断しますが、もともと違う制度だったので、実態としては東京本部で審査される障害厚生年金は厳しく、各地域の事務センターで審査される障害基礎年金は障害厚生年金ほどは厳しい判断はされませんでした(都道府県により異なる)。ある意味障害基礎年金の方がやや緩やかな審査になっていました。
今回のガイドライン創設と連動して、審査も平成29年度より東京本部で障害基礎年金を審査しますので、地域的な不公平は無くなるものの、障害基礎年金と障害厚生年金の審査レベルが同一になり、障害基礎年金の2級のバーが上がる(難易度が上がる)ことが想定されます。
患者さんの病気だけでなく生活障害の状況も併せて主治医が診断書に記載し、認定医が等級を判断するところに障害年金の審査上難しい面があります。
障害年金の受給についての最終目標は、所得補償の考えもありますが、Well-Beingな生き方を患者さんが可能となること(本人の生活の改善に役立つこと)にあります。
<上島社労士の感想>
やはり、障害基礎年金の2級の認定レベルのバーが高くなるかどうか危惧しています。
等級判定ガイドラインに基づく認定結果が出てくるのはこれからなので、現時点障害基礎年金の審査が厳しくなるのかどうなるのか予測がつかない状態です。
東京一元化により、都道府県単位の地域間の認定の不公平感がなくなり、かつ審査の運用については従来通りの(大阪の場合)バーの高さを維持してくれればありがたいと考えています。
2.認定医の先生のご講演について(要旨と感想)
病気の種類により生活特性が異なることに注意する。
例えば統合失調症は幻覚(まぼろしの知覚)や妄想等(被害妄想など)の陽性症状と情意障害(意欲の障害など)の陰性症状がある。本人の病気に対する認識がない為、年金請求が大幅に遅れることもある。
うつ病や発達障害は日本社会が作り出した側面もある。人間は気分の変動もあり、うつ病などは経過により回復するものも多い。
神経症や人格障害の方は、抑うつ状態になるケースが多いが、主治医が神経症性抑うつ状態をうつ病として診断書を作成しても、基本は障害年金の認定は下りない。なぜなら神経症は治療がうまくいけば症状がなくなる為。ただし審査請求等でうつ病として認定されることもある。
うつ病は半年ぐらいで治ることも多いが再発しやすい。治療によって人生が変わるので、治療によりもっといい人生を送ることが可能と思う。
統合失調症は最近軽くなってきており、入院期間も短くなってきている。そううつ病と区別できない患者さんも増えている。
障害年金の受給は、その人の人生に有意義でありプラスに働くならば申請を進めるべきであるが、反面中途半端だと社会復帰を閉ざすことにもなり、マイナスに作用することもある。
主治医の先生が患者さんの日常生活を把握するのは、多忙の中ではなかなか難しい。又精神障害のガイドラインを現段階で知っておられるDRも少ない。
(この実態は、社会保険労務士が患者さんと主治医の先生の仲介役として、患者さんの日常生活をきっちりDRに伝える役割を担っていることを示唆しています)
知的障害者の就労(障害者雇用等)に対する認定の判断は、認定医に委ねられており、個々の先生のご判断になる。20歳前障害の障害基礎年金の請求に関して、請求者の収入が月10万円の場合一律不支給にしないとか、肢体不自由の場合20万円以上の収入がないと不支給にしないなどの保険者側からの話も過去あった。自分としては金額のみでは不支給にしていない。
障害年金受給は障害者の生活設計の出発点になりうるであろう。
<上島社労士の感想>
確かに障害年金の受給は患者さんにとって、もろ刃の剣であることは真実だと思います。気分障害の患者さんにとって、いつまでも障害年金を受給したいという気持ちは理解できます。しかし本来なら体の調子がよくなって、社会復帰できる方がご本人にとって望ましい姿であるし、最終的には社会的に自立できることがベストと考えます。
しかし、現実問題、現在の体調がとてもしんどくて労働も日常生活も満足にできない方もたくさんいらっしゃいます。そういった方々に所得補償としての障害年金の受給は、一定の期間に関しては極めて有用な制度だと思います。
神経症はやはり年金機構のみならずDRにおかれても障害年金の対象としては認めたくないのですね。しかし神経症の方々が全員治療がうまくいって社会復帰できるとは思いません。かなりの長期間日常生活が満足にできない方もおられます。長期間神経症にかかり、治癒できない方には障害年金の制度が利用できることを切に望んでいます。
障害年金と就労の問題は結局個々の認定医の判断になるのですね。そうだとすれば、理解のある認定医に当たれば認定が下り、そうでない認定医に審査されると不支給の憂き目にあうのは不公平ではないでしょうか。運不運という言葉で片付けたくない事項です。年金機構がもっと踏み込んだガイドライン(ものさし)を設定すべきだと考えます。
平成29年7月、東京にて障害年金を扱う社会保険労務士を対象とした大規模な障害年金の会議がありました。日本全国から障害年金に専門特化した社会保険労務士が集まり、各自活発な議論がされましたので報告いたします。
自分以上に頑張っておられる社会保険労務士が全国にたくさんおられ、もっと積極的に各方面にアプローチすべきと痛感しました。
事例報告においても、救急搬送された患者さんのカルテが救急病院にもうない場合でも、消防署(市役所管轄)において救急搬送の過去の記録が残っている場合は、その記録を証明書にしていただいて、初診の証明書の替りとしての客観的な資料として提出され、初診として認められた報告がありました。なかなか消防署の記録まで知恵が及ばなかったことを痛感した次第です。
又、発達障害の診断名で不支給になった事例であっても、知的障害を患っていれば、再度知的障害で申請することは可能とのコメントがありました。これは過去に障害年金の審査に携わったことがある今は開業されておられる社労士さんからの回答でありました。
更に事例報告においても、啓蒙活動として、養護施設や就労支援施設へ赴いて障害年金の勉強会を行っている方もおられ、社会保険労務士としての役割を再度認識させていただきました。
これからも障害年金に対する気持ちをさらに向上させ、皆様のご期待に応えていきたいと考える所存です。(平成29年7月21日)
平成31年3月に医師目線から障害年金の診断書や認定基準についてのご感想をお聞きする機会がありました。
いつも依頼状と診断書シートを患者さん経由で主治医にお渡しいただくのですが、お医者さんの立場から障害年金についてのご意見を聞くケースはあまりありません。
要旨としては、以下の通りです。
(障害年金・診断書依頼時の内容)
1.医師の領域を尊重すること。診断名や治療方針、現症、予後などが当てはまります。
2.〇〇と書いてくださいとか、〇〇の診断名にしてくださいは逆効果になる恐れがある。
3.診断名は時間の経過により変わりえるもので、誤診とは異なる。
4.社労士が主治医に面談する場合、患者さん経由で主治医に相談してみてその反応を踏まえてアポイントを取ることが望ましい。
5.家庭での生活状況は主治医がすべて把握しているわけではないので、コンパクトに伝えることが望ましい。等のお話がありました。
6.情報提供者としてのスタンスであればよいのではないかというお話でした。
(各種診断書について)
各診断書の記載内容について、必要となる検査や分類について詳しく説明を頂きました。特に私としては医学の臨床現場に携わったわけではないので、胃ろうや膝蓋腱反射、バビンスキー反射、徒手筋力検査の内容、ヒュージョーンズの分類やチャイルド・ピュー分類、パーフォマンスステイタス(PS)の概念など再確認でき良かったと思います。
特にがんの認定基準がPSの分類の基準と同じ内容なのに驚きました。医師から障害認定において一般状態区分表のア~オのどの位置に当てはまるかは、がんの場合PS値はどのあたりかをお聞きすればおおよその障害状態が判明するわけです。
参加して価値ある勉強会でした。今後もこのような会には積極的に参加して、障害年金のサポートに役立てたいと考えます。
令和元年7月より個人番号を使っての情報連携が年金についても開始されました。しかし、マイナンバーで全て解決できるものではありませんし、別途書類が必要になったりします。
障害年金の請求においては、
①単身(独身)の方だと、「現在の障害状態」で申請される場合は、個人番号だけで、住民票や戸籍謄本、所得証明を添付することが省略できることになります。
②しかし、配偶者やお子様(原則高校3年生までのお子様)がおられる場合は、戸籍謄本が必要になります。
③個人番号だけで取得できる情報は、年金事務所の話だと平成29年度以降の分だけです。平成29年度(平成28年分)より前の情報については、市役所で従来通り「紙」で証明いただくしかありません。
➃障害年金などで、過去に遡って障害認定日請求をされる場合などは、従来通り、戸籍謄本や世帯全員の住民票、所得証明などを取得する必要がでてきます。
⑤社会保険労務士が代理人として障害年金を申請する場合は、年金手帳に記載の基礎年金番号を委任状に書いて頂くことが多いのですが、基礎年金番号ではなく個人番号(マイナンバー)を委任状に記入の場合は、別途個人番号のコピーも必要になります。
⑥添付書類は、個人によって、請求する制度によって異なりますので、詳しくは年金事務所や市役所にお問い合わせください。当事務所でも、必要な書類はアドバイスさせて頂きます。
令和2年9月に日本年金機構が「障害年金業務統計」なる資料を発行しました。令和元年分の統計資料で、障害基礎年金と障害厚生年金に分けて支給率や非該当率(不支給率)が記載されています。障害年金トータルでは1年間に11万5千件余りの請求件数に対して、1級が14.1%、2級が57.9%、3級が15.4%、非該当が12.4%の数字が出ています。
注意すべきは、この数字はあくまで請求にこぎつけた方を母数にしています。初診日がわからないとか、しんどくて書類が整備できない方が水面下に多数おられますので、誰もが障害年金を容易にもらえるわけではありません。
私の経験では、市役所の国民年金カウンターで相談を受け書類をもらわれた方を母数とした場合、実態として書類一式を整備してカウンターに提出(申請)できた方はその半数(50%)程度の率でした。書類を取得・整備することは決して簡単な作業ではありません。
今回の内容をザックリ説明しますと
1 障害基礎年金については、1級が17.1%、2級が68.3%、非該当(不支給)が14.6%でした。障害基礎年金は3級の認定がないので、障害厚生年金より非該当の割合が高くなります。
2 障害厚生年金については、1級8.9%、2級39.6%、3級42.2%、手当金0.6%、非該当8.7%の率でした。障害厚生年金は3級まであるので、障害基礎年金より非該当の割合が低いです。
しかし3級の認定割合が42.2%ですから、多くの方が低額(最低保証額が年間約58万円)の障害年金になっていることに注意する必要があります。1級と2級の確率も、両方足して48.4%の割合ですから、2級以上で受給できる方は請求者の半数を切っています。極力3級ではなく2級に認定されるよう、障害年金専門の社会保険労務士としてサポートできればと考えています。
3 障害年金の種類別では、障害基礎年金の請求では精神障害と知的障害が請求件数の75%と圧倒的多数を占めていました。それに対して障害厚生年金の請求では、精神障害・知的障害39.7%、内部障害26.7%、外部障害33.6%とバラけていました。
4 障害基礎年金の診断書種類別分析では、精神・知的障害の非該当率は12.3%に対して、呼吸器疾患48.3%、循環器疾患62.1%、血液・その他(がん)47.0%と内部障害の請求では半数の方が不支給になったことを表しており、内部障害では、障害基礎年金の請求がかなり難しいことが改めて認識できました。肢体障害については18.2%の非該当率でした。
5 障害厚生年金の診断書種類別分析では、精神障害の非該当率は9.8%と少ないですが、3級の認定が37.6%と高い割合でした。内部障害では、非該当の率は12.5%と低いですが、3級の割合が48.3%を占め、特に循環器疾患では84.8%の方が3級の認定でした。血液疾患・その他(がん)の場合も3級の認定が56.6%を占め、非該当が20.8%でした。肢体障害についても3級の割合が42.7%を占めていました。
障害厚生年金では3級までありますので、障害基礎年金の2級のボーダーラインの方がかなり3級になっているのではと推測しています。
6 都道府県別の受給決定率も確認しましたが、若干のばらつきはあるものの総じて同じ確率で受給されていました。
上記より、私の判断ですが、障害年金の不支給率は障害基礎年金12.4%、障害厚生年金8.7%と大きくはありません。しかし申請までたどり着けない水面下の方がたくさんおられますので、決して容易な作業ではありません。
特に障害厚生年金では3級の認定割合が高く、正確な診断書を主治医に書いて頂き、適正な病歴就労状況等申立書を準備することにより2級以上の割合を伸ばしたいと考えます。
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